輪島漆再生プロジェクト実行委員会
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輪島漆再生プロジェクト実行委員会 

事務局
〒933-8588
富山県高岡市二上町180番地
  富山大学芸術文化学部 安嶋是晴
活動の目的と内容


漆の木


1.背景や必要性
 国内で使用されている漆の99%は中国産です。国内で行われていた漆生産は、戦後、安価な中国産の漆が大量に輸入され、その需要が中国産に取って代わっています。現在、国内で漆の木を育成し、漆を生産・販売する体制が維持されているのは、岩手、茨城、栃木程度です。過去には、輪島でも多くの漆の木が生育し、輪島塗の生産に活用していました。輪島は漆の木が育ちやすい気候で、良質な漆の木が群生していたことも漆器産地形成の重要な要因だったといえます。しかし、輪島も他地域と同様、安価な中国産漆の輸入増加によって漆生産はほぼ消滅してしまいました。本来伝統的工芸品は、地元の資材と技術で担われるべきものです。しかし現在の漆器産業が使用する漆は中国産となっています。その大きな理由は中国産漆の5倍という価格です。見た目にはほとんど差がなく、機能面でも比較しにくい状況で、中国産漆へシフトするのはやむを得ないと思われます。さらに漆器の売上が低迷し、割高な国産漆の需要低下に拍車をかけています。確かに中国産でも質が良い漆があるのは事実です。しかし独自の地域風土で育まれ、耐久性も高く、独特の光沢と艶を生み出す国産漆で漆器をつくることは、漆器の付加価値を高めるとともに、地域のアイデンティティを再構築することになるのではないでしょうか。また漆器産業が停滞し、光明が見いだせない今、輪島塗を輪島産の資材と技術でつくるという原点に立ち返ることは、極めて有効であると考えています。さらに別な視点からみると、近年、中国との政治的な軋轢の中、レアアースのように過度に外国資源に依存する状態が極めて危険だということがわかってきました。99%中国産に依存する漆は、今後外交問題によって、漆器産地に災いをもたらす可能性も高いのです。私たちは今一度、国産漆のあり方を考える時期に来ているのではないでしょうか。このような文化的な背景や政治的な問題、製品としての付加価値づくりなどの観点から、私たちは国産漆を再生させることが必要だと考えています。



2.プロジェクトの内容とその特徴
 輪島漆再生プロジェクトは、植栽した苗が成木になるまでの10年サイクルのプロジェクトです。
本事業(初年度)は1年目のキックオフとして位置づけられます。今回は、漆の活用サイクルを「植える」「つくる」「使う」の3つの段階に分類し、それぞれの段階で市民参加型イベントの実験・啓発事業を行い、課題を探りながら、多くの人に輪島漆再生の意義を知ってもらうというものです。


 ・「植える事業」について
 「植える事業」とは、一般市民をはじめ、漆器に関わる人たちが、苗木づくり・植栽・木の育成方法を、石川県林業試験場の研究員や苗木育成の経験者から学ぶ機会を持ち、実際に植栽を実践するものです。植栽後、下草刈りを行うなど漆山を整備するイベントも行います。


 ・「つくる事業」について
 「つくる事業」とは、樹液を採取し、精製、販売する状態にすることです。輪島市縄又に住む奥能登唯一の87歳の漆掻きを講師に迎え、講義を受け、技術の伝承も含め、漆かきを体験します。また6月から10月までの期間、実際に輪島に残存する漆の木を掻いてもらい、輪島漆の試供品をつくるとともに、伐採後の漆の木の活用法を検討します。


 ・「使う事業」について
 「使う事業」とは、実際に採取された輪島漆と中国産漆を見比べる機会を持つとともに、その違いを学び、また採取された輪島漆で試作品をつくり、仕上がりで中国産漆とはどのような違いがでるのか調べます。


 この「植える事業」「つくる事業」「使う事業」において、それぞれ農林業者、漆掻き、漆器事業者という主体が存在し、相互に思いを共有し、有機的に結びつかないとネットワークが有効に機能しないと思われます。特に漆器業者の輪島漆についての理解が重要になります。 そこで、この農林業者、漆掻き、漆器事業者を媒介する役割として、市民の積極的な関与を促します。本事業は、単なるイベントではなく、教育事業でもあります。市民は、漆器製品を購入する消費者として、また厳しい目を持った企画者として、さらに、口コミで広げる宣伝マンとして多様な側面を持っています。その市民に気付きを与え、消費者ニーズを変化させ、それを梃子に事業者の意識を変えていくことを狙っています。


4.期待される具体的な効果
 輪島漆の復活は、素材、技術すべてが輪島で作られた輪島塗の再生となります。輪島塗に新しい付加価値を生み、輪島漆器産業の振興に寄与する可能性があります。文化財の修復が国産漆で行われていることから、そうした分野への展開可能性も考えられます。そしてまた多くの市民が漆器産業に従事していることから、漆器業の振興は輪島地域の活性化に直結すると思われます。 さらに、輪島漆再生の拡大プロセスには、新たなビジネスが創造する可能性があります。漆掻き職人や国産漆販売業をはじめ、植栽を進めるため山を整備する建設業者、農林業者などの雇用が生まれ、現在の重機・機器など持っている建設業者においては、副業として即対応が可能であると思われます。 また間接的な効果ですが、漆の木は環境に優しい植物です。漆の木は10年程度で掻きとられ、掻き取られた漆の木は伐採されます。伐採された漆の木は燃料としての活用や、漆器の木地としての活用可能性があります。さらに伐採された切り株からは萌芽し、10年経つと再び漆を掻くことのできる成木となります。漆山の整備により循環型社会が構築され里山が再生する可能性を持っているのです。輪島漆の再生においては、新産業の創出、既存産業の復活、山の環境保全を総合的に行うことができると考えられます。


5.成果の活用
 本プロジェクトの成果は、民間や行政などが個別に行ってきた漆の3つの事業を一元的にとらえ、課題を整理しながらモデル化することです。このモデルに基づき、今後10ヶ年プランを構築し、次の事業に取り組みます。 特に、単なる農林業者、漆掻き職人、漆器業者の直線的な流通プロセスではなく、市民も積極的に事業関わり、地域の活性化に成長させることが求められます。したがって、今後、積極的なボランティア募集やトラスト制度の構築、苗木の寄付活動などでさまざまな市民参加型事業として成長していくことが考えられます。今回は会員を30人程度まで拡大し、10年後は3,000人の会員が事業に関わってくれることを目指します。
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